2016年10月に新規投稿した「司法書士で新規開業して食えるのか」とのタイトルの記事へのアクセスが現在も多いようである。

2022年9月の今週は新規お問い合わせも少なく、本日金曜日の午後は仕事をやる気も失ってしまったので、新たなデータを追加してみることにする。

なお、この記事にあるデータは全て日本司法書士会連合会が発刊する司法書士白書を利用している。過去のものなどは日司連ウェブサイトの司法書士白書のページからもご覧になれるので、正確なデータなどはそちらをご確認いただきたい。

前回の投稿では平成17年(2005年)と、平成26年(2014年)のデータを比較したが、今回は令和2年(2020年)のデータを追加している。

まず、司法書士数の推移は次のとおり。

全国の司法書士数(各年とも4月1日現在の人数)
・2005年 17,735人
・2014年 21,658人
・2020年 22,724人

2005年と2020年の全国の司法書士数を比較すると128.1%に増加している。

続いて、不動産登記の件数のうち、司法書士の業務である「権利に関する登記事件数」の推移は次のとおり。

権利に関する登記事件数(土地、建物の合計)
・2005年 10,181,112件
・2014年 8,752,508件
・2020年 7,574,692件

2005年と比較すると2020年は74.4%に減少、15年間で約4分の3までに登記件数が減ってしまったわけだ。

上記のデータから1人あたりの登記件数を単純計算すると次のとおり。

・2005年 574件
・2014年 404件
・2020年 333件

1人あたりの登記件数は2005年と2020年を比較すると58%までに減少している。単純にこの数字だけでみれば、司法書士1人あたりの売上が15年で約4割も減っていることになる。

司法書士の仕事は不動産登記だけではないとしても、現在でも不動産登記による売上が大部分を占める司法書士事務所が多いはず。

私自身は、他の司法書士の状況などを知る機会は全くないものの、上記のようなデータを見る限り、司法書士の未来が明るいとはやはり思えない。

それなら、成年後見とか簡裁代理とか債務整理とか他の業務はどうなんだと思う方は司法書士白書をご覧いただきたい。

また、不動産登記の全体としての件数が減っているとしても、相続登記が義務化されるのにともない、司法書士への依頼も増えるのではないかとの期待もあるかもしれない。

相続登記の件数を表すデータとして、権利に関する登記事件数の内訳の中に「相続その他の一般承継による所有権の移転」がある。この全件が相続登記でないとしても、全体としての傾向を確認することはできる。

相続その他の一般承継による所有権の移転
・2005年 888,040件
・2014年 1,052,821件
・2020年 1,137,332件

この「相続その他の一般承継による所有権の移転」の件数を、司法書士1人あたりで計算してみると2005年も2020年も約50件となる。

相続登記の件数は多少なりとも増えているとしても、司法書士の数も増えているので、1人あたりの件数は変わらないというわけ。

上記データには、相続登記の義務化による影響はまだ出ていないはずなので、今後どうなるのかは分からないが。

暗いことばかり言っていても仕方ないので、少し話を変えよう。

余談になるが、私自身が取り扱っている登記件数(権利に関する登記事件数)は、どの年についても上記の1人あたり登記件数に全く届いていない。

そんな私からすると、平均件数がこんなに多いならば、当事務所以外の皆さまはさぞかしかっているのかとも思ってしまうが、現実には一部の司法書士法人などが平均値を引き上げているのだろう。

ただ、登記件数が平均よりずっと少ないとしても、相続登記の件数はそれなりに多いし、不動産登記以外の業務もあるので、今のやり方でも何とかずっと食えているわけだ。

とくに結論はないのだけど、今から司法書士で新規開業して食えるのかとえいば、食えないことはないだろうけど簡単ではない。そして、かつてよりも難易度は上がっているといったところか。

なお、この記事はたんにデータから見て食えるかどうかを書いているだけなので、あくまで参考程度に捉えてください。