2018/01/26付の毎日新聞によれば、2018年1月に日本国内の弁護士数が初めて4万人を突破したのが、日本弁護士連合会への取材で明らかになったとのこと。

司法制度改革が本格始動した2002年以降、弁護士が大半を占める法曹人口の拡大が続き、ここ10年間で約1.5倍に増えた。日弁連は活動領域の拡大に力を入れているが、裁判件数が増えていないこともあり「司法試験の合格者数を抑制すべきだ」との声もある。

弁護士が増えたのならば、弁護士の主要業務である民事訴訟の件数も増えているのかといえば全くそんなことはない。

記事によれば、「最高裁などの調べでは、全国の地裁に起こされた民事裁判の件数は、一時的に激増した過払い金訴訟を除くと過去10年、年間9万~10万件でほとんど変わらない」とのこと。

最近では、仕事が無いために低収入の弁護士が増えているというような報道をしばしば見かけるし、業務の重なるところのある司法書士の現状から推測しても当然といえるが。

ところで、司法書士の人数については、2007年4月1日の18,520人から、2017年4月1日には22,283人となっている。弁護士ほどには増えていないが、司法書士の人数も約2割増えているわけだ。

民事訴訟を主要な業務としている司法書士は多くないと思われるが、地方裁判所、簡易裁判所の通常訴訟の件数はどうなっているのかを確認してみた(データは平成28年度の司法統計による)。

通常訴訟の新受件数
通常訴訟の件数

地方裁判所、簡易裁判所ともに2009年がピークとなっているが、この頃が過払金返還請求訴訟の最も多かった時期なのだろう。2013年から2016年の4年間は地裁が14万件台、簡裁が30万件台となっており、10年前よりもだいぶ件数が減っているのが分かる。

なお、上記の毎日新聞の記事では、全国の地裁に起こされた民事裁判の件数は「過去10年、年間9万~10万件でほとんど変わらない」とあり、地方裁判所の「通常訴訟の新受件数」とはかなり食い違いがあるが、過払金返還請求訴訟を除けば過去10年間の件数はほとんど変わらないということについては一致しているといえるだろう。

司法書士の主要業務である不動産登記の件数については過去記事(司法書士で新規開業して食えるのか)に書いたが、司法書士がこの10年で2割も増えているのに不動産登記の件数は大幅に減少している。

司法制度改革により認定司法書士が簡裁訴訟代理等業務をおこなえるようになったものの、簡易裁判所での民事通常訴訟の件数は増加せず、元々の主要業務であった不動産登記の件数は減っているわけだから、司法書士が以前よりも食えなくなっているのは当然であろう。

弁護士や司法書士も商売の1つだと考えれば、放っておいてもどんどん客がやってくるような商売は今どき滅多に無いのだから、食える人と食えない人に二極化していくのは仕方の無いところなのかもしれないが。

今となっては信じられないような話であるが、私が独立開業した10数年前には「仕事が無くて廃業した司法書士はいない」とまことしやかに言われていた。業務絡みのトラブルに巻き込まれたり、本業とは別の投資に失敗したりして、司法書士をやっていけなくなった人はいても、仕事が無くて食えないから廃業する司法書士なんていないというのだ。

それが今は、司法書士の資格を取ったはいいが食えそうに無いから独立開業はしないとか、思い切って独立開業してみたもののやっぱり食えないから司法書士法人に入社した話もザラにあるのだろう(そのようなケースの実数は知らないし、あくまでも想像であるが)。

このような、「司法書士は食える」とか「司法書士は食えない」とかいう話を何度書いても、人それぞれとしか言いようが無いし、全ての司法書士が満足に稼げるようになることは将来的にも無いのだろうと思う。

さらには、弁護士にしても司法書士にしても、AIに仕事を奪われていくという脅威にもさらされていくのは時間の問題か。現時点では、いくら囲碁や将棋でプロに勝ったといってもゲームの中だけでの話であるから、弁護士や司法書士の業務がすぐに奪われるとは思えない。

AIとはちょっと違うのかもしれないが、自動車の完全自動運転も2020年までには実現しなさそうだし、自動翻訳機の実用化により東京オリンピックでは世界中からやってくるお客様と自由自在にコミュニケーションが取れるなんてことにもなりそうに無い。

しかし、AIが一気に進化して人間の能力を瞬時に抜き去っていく時がいつか来るのだろう。まあ、そうなったら弁護士とか司法書士とかいってる場合では無いだろうし、そんな先のことは何も考えていないのだが。