ここのところ相続登記のご依頼を多数いただいているが、なんだかやたらと複雑なものが多い。何でこんなに難しいのが多いのかと考えてみたところ、相続登記のご依頼自体が以前より多くなっているので、その中には当然ながら難しいものも含まれているということか。

たとえば、土地は祖母で、建物は父の名義になっているが2人とも亡くなっている。祖母の後に父が亡くなり、最近になって母も亡くなった。そして、祖母、父、母のいずれについても最終相続人がご依頼者のみであるという非常に珍しいケース。

数次相続で最終相続人が1人の場合、共同相続人の存命中に遺産分割協議をおこなっていたか、または特別受益があった場合を除いては、最終相続人へ直接登記することはできなくなっている。

甲の死亡により、配偶者乙と甲乙の子丙が共同相続人となったが、相続登記未了の間に乙が死亡した場合において、甲から丙に相続を原因とする所有権の移転の登記をするためには、丙を相続人とする遺産分割協議書又は乙の特別受益証明書等を添付する必要があり、これらの添付がない場合には、乙丙へ相続を原因とする所有権の移転の登記をした上で、乙の持分について丙へ相続を原因とする所有権の移転の登記をすべきである。(登研758)

遺産分割協議をおこなっていたなどの事情は一切無いので、原則どおり複数回に分けての移転登記が必要となる。とりあえず、建物3軒、土地2件の合計5件の登記が必要になることを前提としてお見積もりをした。

なお、登記の数が多くなるので、最終相続人が2名以上の場合と比べて登録免許税が余計にかかるのは仕方ないとして、司法書士報酬は単純に相続登記2件をご依頼いただいたときと同じ程度に抑えた。

当事務所報酬基準を単純に当てはめればもっと高額になってしまうのだが、最終相続人が1人であるという理由のみで司法書士報酬まで高額になるのは気の毒なので減額した次第。

ところで、母の生前に司法書士へ問合せをしてみたところ、今回の見積もりよりもずいぶんと高い金額を提示されたらしい。母の生前であれば、少なくとも父の相続人は複数なのだから、今よりも費用が安く済むはず。少なくとも当事務所でお見積もりしていれば、だいぶ金額は変わるはず。

当事務所のようにネット経由で多数の相続登記のご依頼が来るような司法書士は少数だと思われるので、たまにしか来ない相続登記ではいっぱい報酬を取ってしまおなんて司法書士事務所もあるのかもしれない。