少し前のものだが、「なぜ日本人は賃貸自由主義より35年ローン地獄を選ぶのか」とのタイトルの記事を見て考えたことなど。

都心の不動産価格は確かに2013年のアベノミクス開始以来上がり続けたが、それは2016年がピークだ。2017年は踊り場。中古マンション市場では、2017年に入ってから緩やかな下落が始まった。郊外や地方では、中古マンション価格の下落は鮮明だ。

日本では既に空き家が多くなっているというのに、マンションの過剰な供給が続いている。そして、今後は人口がどんどん減っていくのだから、ごく一部の優良物件を除いては住宅の価格が値上がりしていくはずが無い。

したがって、郊外や地方にあるほとんどのマンションは購入した時点で大幅に価格が下落して、その後も価格が上昇することなどまずあり得ないのだから、いざ住宅ローンが支払えなくなったときには大変なことになる。

手放そうにもオーバーローンの状態だから簡単に売却することは出来ないというのもあるし、せっかく購入したマイホームを手放すなんて絶対に出来ないと考える人も多い。時価より残債の方が多いマンションなど、ぜんぜんマイホームじゃ無いのだが。

私の場合、司法書士として数多くの自己破産申立てを取り扱ってきたわけだが、無理して住宅ローンを組んで家を購入したために悲惨な結果になってしまった人を多く見ている。住宅ローンを支払うためにカードローンなどで借入れをして、最終的にはマンションを手放して自己破産するしかなくなるわけだ。

マイホームをどうしても手放したくないのであれば、自己破産では無く個人版民事再生によることも考えられる。しかし、明らかにオーバーローンの状況にあるマンションをそこまでして守る必要があるのだろうか。

持ち家ならばローンを支払い終えれば、自分のものになるから購入した方が得なんて言う人もいる。けれども、今から35年ローンを組んで実際に完済できたとしても、そのときは築35年の老朽化したマンションが残るだけだ。大規模修繕が必要になるかもしれないし、立替の問題もあるだろう。

たとえ、老朽化したマンションでも持ち家が無いと心配だというならそれでもいいが、そんなマンションだったら35年後には二束三文で買えるに違いない。

また、一生賃貸だったとしても35年後にはそこら中に空き家があるはずだし、高齢者は家を借りることが出来ないなんてこともあり得ない。そもそも、35年後の日本は高齢者だらけなのだから、高齢者以外の誰が家を借りるのかという話なのであり。

家を買う人がいなくなったら司法書士の商売はあがったりなのだから、こんなことを司法書士が言うべきじゃ無いのだろうけど、債務整理やお金の問題がメインの司法書士としてはそう考えるわけで。

自分自身の話でも、1度はマンションを新築で購入したものの10年弱で売却し、今は築浅の賃貸マンションで暮らしている。東京オリンピックが終わった後に、お買い得な物件がいっぱい出てきたら、中古マンションを購入しようかなどど思ったり。

子どもの通学の問題などがあると、そう簡単に住み替えはできないのかもしれないが、購入した家にしばられる人生が素晴らしいとは到底思えなかったり。やはり、司法書士の立場としては問題発言ですかね・・・。