日本の国難 2020年からの賃金・雇用・企業(著者:中原圭介)を読んだ。暗澹たる日本の未来を思い暗い気分になっているところに、更に追い打ちをかけるような記述が。

AIが関わるのは頭脳の領域であることを考えると、たとえ高度で専門的な知見を持つ職業であったとしても、将来がずっと安泰で保障されるということはあり得ません。その専門的な仕事の代表格が、弁護士や公認会計士、弁理士、税理士、司法書士、行政書士などの、いわゆる「士業」と呼ばれる職種の人たちです。

まあ、いわゆる士業が今後は大変なことになるというのがこの本の主題ではなく、『これから10年後、20年後の大きな時代の流れでは、AIの普及はブルーカラーの仕事だけでなく、ホワイトカラーやサービス業の仕事をも大いに奪っていくことになるのです』という文脈に続いての話なのであるけれども。

日本経済新聞とファイナンシャル・タイムズの共同調査によれば、人が携わる約2000種類の業務のうち、3割程度はAIやロボットへの置き換えが可能であるといいます。日本に限れば、実に5割超の業務が置き換えできるというのです。

大変なのは士業だけでなく、生産性の低い業務が多かった日本においては、他国に比べて更に多くの業務が置き換え可能であると。

将来的にはAIが業務の大半を代替できるようになるため、専門職の人たちの経営環境は激変していき、10年後には今の仕事の半分以上はなくなっているかもしれないのです。

司法書士に関しては、弁護士、公認会計士などと列記されているだけで具体的な記述はないのだが、司法書士の頭の中に入っている先例や登記実務の取り扱いレベルの知識など簡単にAIに置き換えられてしまうだろう。

AIが登記申請をするとなれば絶対に間違っていないのだろうから、法務局で調査や確認などする必要もないということだろ。私の頭では全く想像が付かないが、司法書士や法務局がおこなっている業務のほとんどは不要になるのだろう。

弁護士の業務については、この本に『裁判に関する学習を重ねてきたAIであれば、過去の膨大な判例をすべて記憶しているので、これまで人が相応の時間を割いて調べてきた判例を瞬時に見つけ出すことができるのです』とあるが、たしかにそう遠くない将来に現実になるのだろう。

こうなるともう、弁護士も裁判官もいらないような気もしてくる。AIが勝手に事実認定をして判決を出すというわけだ。AIに死刑判決を出されるなんていうのは恐ろしい未来であるが、それならば冤罪もないし、変な忖度が生まれる余地もないということか。

それでは、医者なら安泰かといえば『早ければ2020年代後半、遅くともいまから20年後には、AIやロボットが医師の仕事の8割程度を代替することができるようになります』とある。もう、努力して高い能力を身につければ大丈夫という職業は存在しないようだ。

どう考えても恐ろしい未来しか待ったいないように感じてしまう。将来はごく一部の企業や個人にほとんどの富が集中していくのは避けられないはず。そうであれば、ベーシックインカムの導入などにより働けなくても最低限度の生活ができるような社会を目指していくしかないのだろうか。

その最低限度というのが今の生活保護を下回るような苦しい生活なのか、または、働かなくてものんびりと豊かに暮らせるユートピアのような世界なのか。普通に考えて、前者だと考える方が自然だろうが。

何だかもう恐ろしい世界が待っているように思えて仕方ないけれども、司法書士個人が抗えるような話では全く無いので、個人としては何とか自分の職業人生を全うできるよう逃げ切りを図るしかないというところに落ち着くしかない。

10年後には司法書士なんて職業は全く不要になっているかもしれいないけれども。