2018/5/14付の日本経済新聞の記事より。会社設立登記が一日で完了するようになるなんて記事を最近見かけた気がするが、今度はさらに定款認証がスマホでできるようになるとのこと。

「法人設立ワンストップ」19年度導入 ネットで一括 起業を後押し 政府、マイナンバーも活用
法人設立に必要な手続きが簡素化され、起業までの期間が大幅に短縮されそうだ。政府は2018年度から定款をスマートフォン(スマホ)で認証できるようにし、19年度にも複数の手続きをインターネットで一括申請できるシステムを導入する。国際的にみても非効率とされる仕組みを見直し、ベンチャー企業の育成などを後押しする。

この記事の冒頭に「法人設立に必要な手続きが簡素化され、起業までの期間が大幅に短縮されそうだ」とあるが、株式会社設立登記やその他の関連手続きなど起業全体からすれば些末なごく一部のことであり、「簡単に会社ができるから簡単に起業ができる」というのはあまりに短絡的に思える。

会社設立の手続きが負担になって起業が困難だ」などといっているレベルの人が簡単に会社設立を出来るようになっても、結局は何も事業活動をおこなえなかったり、もしくは、簡単に会社を潰す人が増えるだけなのではなかろうか。

政府としては取りあえず株式会社設立登記の登録免許税が得られるし、法人税やその他の税収が得られる可能性が高まるからそれでいいのだろうか。そんなうがった見方をしたくもなるが、そうではなく法人設立が簡単になれば起業が増えて、それが日本の成長戦略に繋がるなんていう単純な夢物語がベースなのかもしれない。

会社設立をする人が自ら公証役場へ行かずスマホで定款認証をするということは、つまり、司法書士などの専門家を通じること無しに公証役場へ本人が直接依頼するということなのだろう。

司法書士に頼めばそもそも本人が公証役場へ行く必要が無いし、スマホで定款認証すれば済む程度の会社ということは、事業目的や機関設計に関する検討に時間をかける必要も無いのだから、そうであれば司法書士事務所に1,2度行けば済むだけの話である。

司法書士なんて間に入れる必要ないし、もっと簡単に会社設立できるようにしようということなのかもしれない。しかし、株式会社設立をするに当たっては検討すべきことも多いのだから、何にせよ相談できる場所は必要なはず。

そうであれば、東京開業ワンストップセンターみたいなのを日本全国津々浦々に新たに作るのだろうか。まあ、設立登記からその後の都道府県や税務署などへの手続きを一括で出来るのは助かるかもしれないが、そういうことが簡単だから起業が簡単ということにはやはりならないはず。

話は戻って、会社設立手続きを簡単にするからどんどん起業してください。でも、簡単に成功するわけじゃないのは当たり前なので後は勝手にやってくださいという考えならば別にそれでもいいのだが。