わざわざブログ記事にするほどの話では無いが、被相続人の甥(被相続人の兄弟姉妹の子)からの依頼により、家庭裁判所へ相続放棄申述をしたところ、被相続人の子のうちの1人がまだ相続放棄していなかったことが判明した。

裁判所書記官から当事務所へ電話があり上記の事実を知ったわけなのだが、既に提出済の相続放棄申述書は保留にしておき、子の全員が放棄した時点で手続きを進めてくれるといういことになった。

家庭裁判所へ書類を持参しての申立てであれば、先順位相続人がいるからということで受付して貰えなかったものと思われる。しかし、今回は郵送により相続放棄申述書を提出したので、とりあえず裁判所が書類を受け取ってしまったわけだ。

被相続人の甥や姪が相続放棄をするのは、被相続人の子(または、孫)から「自分たちは全員相続放棄する」と聞かされたことによるのが通常だろう。この場合に、先順位相続人の全員が本当に相続放棄したかの確認まではしないのが普通だと思われる。

もしも、確認しようとするならば、最も簡単なのは先順位相続人の全員から「相続放棄申述受理通知書」を見せてもらうことだ。しかし、そのためには先順位相続人全員からの協力を得る必要がある。

先順位相続人の全員から協力を得ること無しに、その人々が本当に相続放棄をしているかを確認しようとするならば、家庭裁判所に対して「相続放棄・限定承認の有無の照会」をするしかない。

この相続放棄・限定承認の有無の照会をすれば、先順位相続人の全員が相続放棄しているかを知ることができるのだが、通常はそこまでしていないだろうし、裁判所としても事前照会をすることを求めていないだろう。よって、後順位の相続人が郵送により相続放棄申述をした場合に、先順位者がまだ相続放棄していないのが判明するというケースも稀にあるはず。

今回のケースでは、それほど時間が経たないうちに先順位相続人の全員が相続放棄したため、後順位相続人(被相続人の甥)であるご依頼者の手続きも無事に完了した。これが、被相続人の死亡から3ヶ月が経過した後になっても、先順位者全員が相続放棄の手続きをしなかたっとすれば、いったん手続きを取下げることになったのだろう。

なお、裁判所によっては取り扱いが異なるかもしれないので、先順位者全員が本当に相続放棄したのかを出来る限り確認してから申立てするべきではあった。しかし、そもそも先順位者の全員と直接連絡を取れる関係にはないので、実際に確認するのは現実的ではない。

そして、先順位者が放棄するかどうか分からないというならば、事前に「相続放棄・限定承認の有無の照会」をするべきだったとも考えられるのだが、今回は先順位相続人の1人から「自分たちは全員相続放棄する」と聞かされたことにより手続きを開始したのだから、やはり事前照会をするべきだったとは考えられない。

そんなわけで何となくモヤっとするところはあるのだが、裁判所からも依頼者からも非難やや苦情めいた言われ方は一切していないのであるし、司法書士としても全く処理に問題は無かったと考えて良いのだろう。