当事務所では、個人のお客様からの不動産登記のご依頼については、登記費用を原則として全て前払いでご請求している。

登録免許税がごく低額の相続登記で、完了後の書類を事務所まで取りにお越しいただけるような場合など、まれに登記完了後のお支払いとしているときもあるが、基本的にはすべて前払いを原則だと考えている。

以前は、相続登記など新たに所有権についての登記済証(登記識別情報)が出来る登記については、完了後に事務所へお越しいただける場合には後払いでお受けすることも多かった。

一般の方の感覚としては、権利証を受け取らなければ不動産は自分のものにならないと思うのが通常だろう。したがって、相続登記のご依頼者が完了後に書類を取りに来ないなんてことは、まずあり得ないだろうと考えていたのだ(抵当権抹消など完了後の書類を受け取る必要がない登記については、当初から当然に前払いとしていた)。

しかし、1度だけ何度電話しても取りにお越しいただけないことがあった。そのうち、電話しても繋がらないようになって、どうしたものかと考えているうち、いつの間にか書類保管庫の奥底に眠っているような状況に。

結局はだいぶ時間が経ってから取りにお越しいただけて、お金がなかなか用意できなかったということだったのだが、そのときの教訓もあり登記費用は前払いを原則にすることとしたのだ。

どうしても後払いにしたいという方の場合には、登録免許税など実費相当額だけでも前払いでお支払いいただこうと考えているが、幸いにもそのようなご要望もほとんど無い。

司法書士事務所を開業して間もなかった頃は、何となく自分自身が弱気だったせいもあり、登記費用の前払いを強く求めることが出来なかったときもあったように思う。

しかし、それからだいぶ時間が経ち、見た目で人になめられることはまず無いだろうと思われる位のおじさんになった今では、「登記費用は前払いでお願いしています」と断言すれば異を唱えられることはほとんど無い。

それが今回は、どうしても後払いにしたいというご依頼者が現れた。かなりご高齢の方で、登記が無事に終わるか疑っているわけでもないのだろうが、なぜか費用の支払いは後にしたいと強硬に主張される。

こちらがお願いすることを受け入れていただけない方からご依頼を受けてしまうと、後になって、それ以外のことでも問題が生じやすいものである。

そこで、ご依頼自体を断ろうかとも思ったのだが、「登記費用は絶対に後払いにしたい」という拘り以外はとくに問題が無さそうに思えたし、何より登録免許税がごく低額だったこともあり特例として後払いでお受けした。

過去に費用の支払いを巡ってトラブルに遭われたことがあるのかもしれないし、事情はよく分からない。しかし、当事務所ではちゃんと事前見積もりもしているし、疑念を抱かれるような費用の請求はしていない自負がある。

それだからこそ、同じ場所に事務所を構えて長年やってこられているのだし、過去のご依頼者からの紹介や再度のご依頼も多くなっているのである。取れるときに取っておこうなんてやり方では、絶対に長続きしない。