3ヶ月経過後の相続放棄のご相談。信用保証協会から文書が届いたことで、1年以上前に亡くなった父が保証人になっている債務が発覚したとのこと。財産は何も相続していないとのことなので、それならば相続放棄できるはずだとお答えしご相談へお越しいただくことに。

しかし、お話を伺ってみると新たな事実が判明したため、残念ながらこれからの相続放棄は不可能だとお答えするしかない結果に。

というもの、今回の文書が送られてくるよりも数ヶ月前に葉書が届いていたとのこと。そして、その葉書には被相続人の保証債務についての記載があり、そのことについての認識もあったというのだ。

そうであれば、その葉書を見てから3ヶ月以内であれば相続放棄が可能だったはずが、それから3ヶ月が経過しているのだから今からの相続放棄は不可能だと判断せざるを得ない。

電話口では相続放棄が出来るはずだとお答えしてしまったのに、事務所へお越しいただいてから真逆の結論をお答えするのは非常に心苦しかったが、事実をねじ曲げることは不可能だしやむを得ない。葉書を見た時点で相談してもらえれば・・・。

こういうご相談を受けると、法律専門家としての責任の重さをあらためて痛感する次第。

債務についての葉書を見ていなかった場合は?

今回の事例とは外れるが、もしも、その葉書を受領したものの中身は一切見ていなかったというのであれば、今からでも相続放棄が可能だった可能性はある。

葉書を受け取ったのだから見るべきだという主張はもっともだとしても、現実に見ていないのだとすれば債務の存在にも気付いていないことになる。そうであれば、今回の文書を見たとから3ヶ月以内であれば相続放棄が可能であることになる。

実際、次のような事例で相続放棄が受理された経験がある。

文書は届いていたが、送り主に心当たりがないので放置していた。そのまま他の書類などの中に紛れ込んでいたのを数ヶ月後に発見し、急に気になって中身を見てみたところ債務の存在が発覚したというもの。

このケースでは文書を受け取っていても現実に中身を見ていないのだから、債務の存在を知らなかったことになる。そうであれば、封を開けて中にある文書を見てから3ヶ月以内であれば、相続放棄が可能であるわけだ。

これを乱用するならば、実際には文書を見ていたとしても、見ていなかったと主張すれば相続放棄が可能となることになる。

債権者の立場に立って考えるとすれば、文書を送って相手方受領したからといって安心は出来ない。その文書を見た相続人と話をすることが出来れば、その後は、知らなかった(文書を見ていなかった)との主張は簡単に崩せる。

知っていたのに知らないと言わせるようなことをすべきではない。しかし、事実を丹念に聞き出していけば、最初は無理だと思っていたのが何とかなってしまうこともまたあるわけで。