先日の研修会は、会社売買の実務について役員変更登記を中心にして解説するものだった。講師は会社関係の登記についてのブログで有名な司法書士の先生。

会社売買とは、会社の全株式を買い取ることという理解で良いのだろうか。会社の事業譲渡とは異なり、会社そのものを買い取ってしまうわけである。

株主は交代するが法人そのものは同じなのであるから、取引先との関係は基本的に変わらないし、従業員の雇用もそのまま維持されるというのが通常なのだろう。

その代わり、会社に属している権利義務もそのままなのであるから、事業譲渡受ける場合や会社分割によるのと比べて、買い取る会社に瑕疵が存在しないかなど慎重な事前調査が必要。

ただ、司法書士がするべき業務は登記に関連するもののみであるから、会社売買にともない変更になる役員や、その他の変更登記を確実におこなうのが仕事であると思われる。

ただ、株主総会に参加するのが旧株主なのか新株主なのか、旧役員の辞任の時期や、新役員の選任を新旧いずれの株主がおこなうのか、その他いろいろ検討すべきことが多い。

正直なところ研修で話を聞いていても、会社売買にともなう登記実務を自分がやるというのは想像できない。ただ、登記さえ出来ればよいというのならまだしも、現実の株主総会開催などに沿って正しく議事録を作成し、確実に登記をするというのは全く手に負えないという印象。

現在の商業登記は難しすぎて、特になんてこと無いと思われる役員変更登記であっても、毎回のように頭を悩ませている。そのようなレベルの司法書士にとって、会社売買にともなう登記実務をおこなうのはほとんど不可能に思われる。

何度かやってしまえばある程度は同じことの繰り返しなのだと思われるが、自分自身で全ての作業をおこない補正も無く登記が終わるというのは絶対に無理であろう。

現状では関わらないようにするしか無いが、今後の需要はより一層増えてくると思われるので、思い切って踏み出してみれば今後の主要業務にもなり得るのかもしれない。

そんなわけで、会社売買の関連は自分にとって難しすぎたのだが、後半の役員変更登記についてのお話しは結構参考になった。

たとえば、代表取締役が変更になるにあたり届出印も変更する場合の、商業登記規則61条6項ただし書きの解釈について。その場で話を聞いただけでは良く分からなかったが、今後同じようなケースが出たときに参考になりそう。

ただ、これまでの自分の経験では、代表取締役が変わるときに届出印を変更したことは一度も無かったと記憶している。ほとんどが個人経営のような小さな会社の登記しか取り扱ったことがないからであろうが。

また、取締役が旧姓による登記を希望する場合の注意事項。代表取締役を旧姓にするならば、取締役も旧姓になっていなくては駄目。そして、旧姓で登記できるのはその取締役の登記をするときに限られるし、本名で登記してしまったのを更正することはできないなど。

実は取締役の旧姓による登記をした経験も無いのだけれど、会社の登記は注意すべき事項が多く、やはり難しいと思ってしまった次第。あまり苦手意識を持ってはいけないのだけれども、片手間でやるのは危険すぎるというのも事実。