最近、家族信託について質問される機会が続いた。これまで家族信託について学ぶ機会が無く、ちゃんとお答えすることができなかったので、とりあえず概要だけでも把握しておこうと思い書籍を購入。

購入したのは、「わかりやすい家族への信託」という本である。なぜこの本を選んだかといえば、近くの書店にはこれしか入門書が見当たらなかったからなのだが、簡単に読めて概要がつかめたのでなかなか良かったと思う。

難しい言葉は使わず文章も読みやすかったので、飽きることなく一気に読み通すことができた。司法書士が書いた本であり、私も司法書士なので理解しやすかったというのはあるとしても、一般の方でもそんなに苦労せずに読み通せることだろう。

ただ、自分なりには家族信託がどんなものか把握できても、いきなり家族信託について相談されて、すぐその場で説明するのは難しいというのが実感。委託者、受託者、受益者なんて言葉を使って説明をはじめたとして、すぐに理解してもらうのは困難だろう。

それこそ、まずは今回の「わかりやすい家族への信託」などの入門書でも読んで最低限の知識を得てもらってから、具体的なお話しを初めて行く必要があるかと。そして、うまく利用すればたしかに有効だとは思うものの、家族の皆さんに理解してもらい同意を得て、実際に信託契約の締結までに漕ぎ着けるのは容易でないとの印象。

司法書士が家族信託を仕事にするとなると、報酬等を得られる可能性があるのは「家族信託設計に関する手数料」、「所有権移転及び信託の登記についての報酬」、「信託監督人としての報酬」くらいか。

現状では上記のような報酬等で利益を得るというよりは、セミナーや講習会を開いたり○○協会みたいなのを作ったりして、専門家相手に稼いでいるのが実情のような気も。本当のところは分からないので、全くの想像に過ぎないが。

ただ、あんまり複雑なのではなく、「自分が亡くなったら全財産を妻に相続させ、自分の次に妻が亡くなった時には、3人の子のうち長男に全財産を引き継がせたい」というような希望がある場合に、家族信託を利用するというのは有効に思える。この場合の信託の設計は次のような感じか。

1.委託者:自分
2.受託者:長男
3.受益者:当初は自分、自分が亡くなったら妻
4.信託終了後の財産は長男が承継

ただし、これにより承継できるのはあくまでも信託財産のみ。全財産を信託するのでなければ、信託財産以外については遺言か遺産分割によるしかない。自分の全財産を長男に信託してしまうというのは現実的ではないから、結局は家族信託により全てが解決するというわけでは無さそう。

家族信託を知ると、最初はこれを使えば全てが解決しそうに思えるものの、詳しく調べていくうちなんか違うかなとなってしまうような。なんかもっとうまいやり方があるのかも知れないが、さらっと入門書を読んでみての感想としてはそんな感じ。

とりあえず、もう少し勉強してみたいとは思うけれども、仕事として積極的に家族信託を相談者に勧めていくかといえばしばらくは様子見か。そもそも、そんなに良いものであれば一気に普及していくはずであるし。まあ、実は本格的な普及期に入っているのかも知れないし、いい加減なことは言えないが。