近年は消滅時効援用についてのご相談・ご依頼が多くなっている。原債権者である消費者金融やクレジットカード会社から請求されている場合もあるが、債権回収会社(サービサー)からの請求に対して消滅時効援用をするケースが増えている。

原債権者から債権譲渡を受けたとする債権回収会社からの請求である場合、すでに消滅時効が完成していると思われるものが多い。そのようなときは、とくに取引履歴の開示請求などをすることなく、直ちに消滅時効援用をしてしまうこともある。

ほとんどの場合、消滅時効の援用をするのみで解決するわけだが、相手方に消滅時効援用をした後に債務名義の存在が発覚するケースが頻発している。つまり、時効援用をした相手方から債務名義の存在を知らされるわけだが、その事実を依頼者(債務者)が知らない(覚えていない?)ということ。

もちろん、時効援用をする前には、訴訟や支払督促を起こされたことがないかはご本人に確認する。自分で訴状等を受け取っていなくても、家族が受け取ってしまえばそれで裁判が進行してしまうとか、さらには不在等により受領していなくても判決が出てしまうこともあるなど。

そのような説明をしたときに不安を感じたのであればまだ理解できるが、絶対に裁判所から書類が届いたことなどないと断言したのに、実は債務名義が存在するという例も多かったりする。普通に生活している人が訴状や支払督促を受け取ることなど、一生のうちでもあまりないことだろう。

裁判所からの特別送達を受け取らなかったとしても、郵便受けに不在票が入っていたとすればその事実を忘れることなど普通はないだろう。もしくは、家族が受け取ったとして、その事実を教えてくれないということもあまり考えられない。

しかしとにかく、そういった可能性を不安視するまでもなく、絶対に裁判所から書類など届いたはずがないというのに債務名義が存在するケースが多いのだ。訳が分からないとしかいいようが無いのだけれど、現実なのだから仕方がない。

そのような場合でも、代理人と相手方(債権回収会社)との間ではあくまでも事務的にやりとりするだけであり、「このやろう、時効援用なんかしやがって。今さら和解なんて応じないからな!」みたいな話にはならない。

しかしながら、10年とかもっと前の債務だと、元金の何倍もの遅延損害金が付加されている場合が多く、一括払いどころか分割でも支払い困難なことが多い。こんな言い方も失礼だが、10数年前の消費者金融からの借金で債務名義を取得されており、さらにその事実を知らない(覚えていない?)人が、今では充分な支払い原資を有しているなんてことはあまりないわけで。

よって、双方が納得するような和解ができるケースも稀なのであり、なかなか悩ましいところである。しかしながら、10年も20年も前の借金についての督促を今になって受け、それによって破産に追い込まれるというのもさすがにヒドすぎる話であるし。

そもそもの話として、借金の消滅時効の援用を業務としておこなうことについても乗り気でなかったのだが、時効になっている債権を大量にかき集めて督促がおこなわれているような現状では、時効援用により支払い義務が消滅することを周知するのも債務整理に携わってきた司法書士の務めだと考えている次第。

金曜日の18時に過ぎにそのようなことを考え続けていても仕方ないので、今日の業務は終了。