債権回収会社からの訴訟、支払督促についてのご相談が立て続けにあった。ご相談のあった3件ともに消滅時効が完成していると判断し、時効援用をおこなうのを前提にご依頼をいただいた。

そして、答弁書や督促異議申立書の提出をおこなうとともに消滅時効援用をしたところ、ご依頼いただいた3件全てについて原告(債権者)から取下げがあった。

もちろん、債権回収会社からの訴訟や支払督促の全てが消滅時効の完成後になされているわけではないが、10年以上も前の借入についての請求が今になっておこなわれているケースが多いのは事実。

時効が成立していると考えられる場合は、訴訟や支払督促が起こされた後でも適切に対応し消滅時効の援用をすれば、相手方が消滅時効援用の主張を認めるときは訴えを取り下げてくるのが通常であろう。

ただ、現実問題としては、原債権者である消費者金融やクレジット会社から債権回収会社に債権譲渡がおこなわれているケースでは、訴訟や支払督促に何らの対応をせずに債務名義を取得されてしまったとしても、その後に何か問題は生じるのだろうかという疑問はある。

債権回収会社の狙いとしては債務名義を取得することよりも、訴訟や支払督促をすることによって任意に支払いをしてくる人が少しでもいれば良いというようなことではなかろうか。司法書士や弁護士に相談した人は時効の援用をしてくるだろうから、専門家に相談せずに慌てて連絡してくるような人が一定数いるということなのかもしれない。

採算が合わなければ、時効が成立している債権についてわざわざ訴訟や支払督促をすることはないはずだから、それなりの効果は上がっていることなのだろうか。もともとの金銭消費貸借契約や立替払い契約をしたことは事実なのだし、時効の利益を放棄して支払うのも自由なのであるから、請求をしてくること自体は正当な行為だといえるだろう。

したがって、司法書士としてはご相談のあったものについて対応していくしかない。昔と違ってネットで調べればすぐに時効のことなども分かるはずなのだが、誰もがそうやって知識を得られるわけでないのも現実であり。

なお、過去にも原告が訴えを取下げたことにより解決したものは多数あるが、ここ最近で実際に当事務所で対応をおこなったのは次の3件。

アビリオ債権回収株式会社からの訴訟

かつて存在した消費者金融である株式会社クオークローンから金銭の借り入れ。アビリオ債権回収株式会社から訴訟を起こされるに至った経緯は次のとおり。

  1. 株式会社クオークローンと金銭消費貸借契約を締結し借入と返済を繰り返していたが、その途中で返済が滞ったことにより期限の利益を喪失。
  2. 株式会社クオークローンからパル債権回収株式会社へ債権譲渡がおこなわれた。
  3. 平成22年4月1日、三洋信販債権回収株式会社がパル債権回収株式会社を吸収合併し、アビリオ債権回収株式会社に商号変更。
  4. アビリオ債権回収株式会社が訴訟を提起

アビリオ債権回収株式会社からの支払督促

プロミス株式会社(現商号:SMBCコンシューマーファイナンス株式会社)からの金銭借り入れ。アビリオ債権回収株式会社による支払督促の申立てに至る経緯は次のとおり。

  1. プロミス株式会社と金銭消費貸借契約を締結し借入と返済を繰り返していたが、その途中で返済が滞ったことにより期限の利益を喪失。
  2. SMBCコンシューマーファイナンス株式会社からアビリオ債権回収株式会社へ債権譲渡がおこなわれた。
  3. アビリオ債権回収株式会社が支払督促を申立て。

札幌債権回収株式会社からの支払督促

商品を購入する際、株式会社学研クレジットとの間で立替払い契約を締結したもの。札幌債権回収株式会社による支払督促の申立てに至る経緯は次のとおり。

  1. 株式会社学研クレジットと立替払い契約を締結し分割による支払いをしていたが、その途中で返済が滞ったことにより期限の利益を喪失。
  2. 株式会社学研クレジットからリバイバルマネジメント債権回収株式会社に債権譲渡。リバイバルマネジメント債権回収株式会社から株式会社NSMインベストメントに債権譲渡。株式会社NSMインベストメントからリゲルインベストメント株式会社に債権譲渡。リゲルインベストメント株式会社から札幌債権回収株式会社に債権譲渡
  3. 札幌債権回収株式会社が支払督促を申立て。