財産分与による所有権移転登記のご相談。離婚してから少し時間が経っているので、分与者は既に住所を移転している。したがって、所有権移転登記の前に、登記名義人住所変更の登記が必要となるのだが、被分与者には絶対に現住所を知られたくないとのこと。

まずは、登記簿上の住所と、印鑑証明書の住所が一致していないと、財産分与による所有権移転登記はできない。よって、前提として所有権登記名義人住所変更をする必要がある。例外はあり得ない旨を説明。

それでも、住所を知られたくないというならば、一時的に別の場所に転居してそこで印鑑証明書及び住民票を取得し、登記名義人住所変更と所有権移転の登記をおこなうしかないだろ。

それならば、登記記録に記載される住所は転居後の住所になるから、登記記録から本当の現住所が明らかになることは無い。住所を転々としている場合であっても、登記名義人住所変更により記載されるのは現住所のみであるからだ。

そして、登記手続きが完了した後に、再び転居してそもそもの現住所に移転すればよいわけだ。このようにするためには、一時的にではあっても現実に別の場所に転居しなければならないのは当然のことである。

ご相談者は納得して帰って行かれたが、このように司法書士ならば当たり前の話ではあっても、一般の方が自分で調べて上記のような結論に辿り着くのは困難であろう。

今回も最初は、法務局で聞いたときはそんな話は無かったとか、印鑑証明書ではなく委任状があれば大丈夫なはずだとか、意味不明な話が出てきた。

そういうときは、私は専門家である司法書士だから100%正しいと断言するようにしている。どっかの首相が私は総理大臣だから正しいとかいう妄言を吐いているのとは違い、司法書士が不動産登記の話をしているのだから正しいのは当然なのである。

それで気分を害する方がいれば仕方の無い話だが、ほとんどの場合、私が上記のように断言するだけでその後の話はスムーズに進む。

こういうときは自分も年を取ったものだと思う。頼りなく見える若造ではなく、それなりに貫禄があり信頼できる雰囲気を醸し出せるようになったかと。

こういう時期が過ぎると、今度はこの老いぼれで大丈夫かと思われるようになるのかもしれないが、それまでには10年以上はまだ大丈夫だろうか。その頃には、悠々自適に過ごせるようになっていたいものだけれども・・・。