一旦は諦めかけていた相続登記をようやく申請するに至った。

一次相続は昭和30年代、二次相続が昭和60年代で、いずれついても遺産分割協議は未了。一次相続の相続人は亡くなっている人も複数なので、相続人は大勢になっている。

また、遺言公正証書により自らの相続分を他の相続人に譲渡した後に亡くなっている相続人も。ただし、相続分の譲渡を受けた相続人が不動産を相続するわけではないので、遺言書によって変わってくるのは、遺産分割協議書に記載する誰が誰の相続人であるかの関係のみ。

そんな場合、遺言書を使わずに遺産分割協議書だけで済ましてしまいたい気持ちにもなるが、ご依頼者の意向もあり遺産分割協議書と遺言公正証書を併用しての登記申請をすることに。この遺言公正証書の作成には司法書士が関与しているのだし、登記に使うことにまず問題ないだろうとは思うのだが。

相続関係がとにかく複雑なので、関連する被相続人と相続人ごとに蛍光ペンで色分けしたりして、なんとか遺産分割協議書は完成。あとは、相続人の署名押印をもらうのみだったのだが、手続きへの協力が得られない、というか手紙を送っても梨のつぶての相続人がいることが判明。

私としては、ご依頼時から相続人全員の協力が得られるか危惧していたのだが、ご依頼者がきっと大丈夫だというので準備を開始していたのだ。

何度か連絡を試みた後に、連絡先として記載しておいた当事務所へ電話をくださったので、ご依頼者とお話をしていただくことに。これで一件落着かと思いきや、ちょっと待ってくれと言われたまま時間が経過するばかり。

もう無理かと思っていたところ、ひょんなことからその相続人の方が相続放棄していることが判明。今までの苦労は何だったんだと思いながらも、相続放棄申述受理証明書を取得して一件落着。

そうして、数次相続の遺産分割協議書、遺言公正証書、相続放棄申述受理証明書を添付しての相続登記を申請するに至ったわけだ。

無事に完了するまでは少し落ち着かないものの、遺産分割協議書のチェックは何度もおこなっているのだし、遺産分割協議、遺言、相続放棄のそれぞれについては特別なことはない。結局は、いろんなものが合わさったことにより、随分と複雑に見えるようになっているだけなのだから、まあ問題ないだろう。

ここまでにかけた労力を思うと、見積もり時にお知らせした司法書士費用はあまりにも安すぎるのだが、たまに費用倒れになるのはやむを得ない。本当であれば、このような手続きでは高額な費用をいただき、普段の相続登記は現状の3分の2程度の費用でも十分な気もする。

しかし、価格設定を下げたからといってその分だけご依頼が増えるわけではないし、自ら価格競争をはじめるようなこともしたくない。よって、現状維持で行くのが無難なのだろう。そんなわけで随分と苦労した相続登記だが、登記するのは土地一筆のみなので申請書はあっけないほどにシンプル。不動産登記なんてどれもそんなものだが。