朝早い時間のお電話。今は法務局にいるのだけれども、これから相談に行きたいとのこと。

あいにく今すぐだとご相談予約が入っているが、1時間後であれば時間が取れるとお伝えしたところ、それでも構わないとのこと。このようなお問い合わせでは、すぐに手続きを進めたいとのお気持ちを抱かれていることからご依頼に繋がる非常に可能性が高いので、何としてでもご来所いただけるようにしたいもの。

結果、1時間後にご来所いただき、相続登記をご依頼いただくことに。当日のご予約がそのままご依頼に繋がるのは非常に喜ばしい。とくに最近は新規ご依頼が少なめなので当日のご予約でも大歓迎なのである。

株式会社設立登記のご依頼ラッシュ

さて、午後は株式会社設立の打合せが2件。建設業の社会保険未加入対策が強化されていることに関連するのか、個人事業で建設関連の仕事をされている方からの株式会社設立の依頼が立て続けに入った。

それとは別の株式会社設立登記のご依頼もあったので、当事務所的にはちょっとした株式会社設立ラッシュ状態である。

当事務所では近年、発起人(出資者)も取締役も1名のみの株式会社を設立することが大多数になっている。どうしても他人から出資を受ける必要があるような場合を除き、小さな会社を設立するなら出資者も役員も自分だけというのが最善であろう。

株式会社設立時に複数の取締役を置いたケースで、設立から何年もしないうちに役員変更のご相談を受けることも何度かあった。役割分担が相当しっかりしていない限り、複数の役員がいればやはり揉めてしまうことも多いはず。

そんなわけで、取締役をどうすべきかと問われれば1人のみでの設立をお勧めすることが多いわけだが、株式会社設立登記のご依頼をいただく司法書士としても手続きが簡単な1人会社は大変ありがたい。

設立書類への押印で失敗

司法書士事務所を開業してから10数年で、株式会社設立登記を100件以上はおこなっただろうか。そのうちの1件たりとも設立登記に失敗して、取り下げるような羽目に陥ったことは無いのであるが、それでも作成した書類に印鑑をいただくときは毎回緊張する。

今回は少しヒヤッとするミスをしてしまったので、自分への注意喚起としても書いておきたい。

資本金を払い込んだ銀行の預金通帳をお持ちいただき、事務所内の複合機でコピーを取ったら、払込があったことを証する書面とホチキスで綴じて契印する。何度もおこなってきた作業であるし、そこに難しいことは何も無い。

しかし、ご依頼者が帰られた後で、出資金の振込日(入金日)を確認しようとしたところ日付が出ていない。「何だよこの通帳は」と思いつつ良く見てみると、コピーミスで通帳の左側が写っていないのだ。複合機の原稿サイズが誤って設定されてしまったために、通帳全体が写らなかったのだと思われる。

慌ててご依頼者に電話するとまだ近くにいらしたので、もう一度ご足労を願い事なきを得た。いつも押印漏れのチェックには万全を期しているのだが、まさかのコピーミスがあるとは考えてもいなかった。

設立書類への押印は全てを1回で済ませているので、後になってもう一度また印鑑をもらうというのは何としてでも避けたいところ。押印が漏れていないかのチェックに加え、通帳のコピーがちゃんと取れているかの確認も怠らないようにせねば。

こんな細かいことに振り回されているのを情けなくも感じるが、細かいのが司法書士の仕事なのだから仕方ない。そして、慣れてしまえば極めて簡単な株式会社設立登記1件で、アルバイトで稼ごうとしたら何十時間かかるであろうかという報酬をいただいているのであるし。

司法書士報酬の価格破壊?

それこそ、毎月10件はコンスタントに依頼が入るのだとしたら、株式会社設立登記の司法書士報酬を半額にしても採算は合うはず。定款認証のために公証役場へ行くのも数件をまとめていくようにするなどして。

しかし、そんなに多数の株式会社設立登記のご依頼が入るわけもないので、私がダンピング競争に身を投じることはない。会社設立以外の業務でもそうだが、当事務所がいただいている報酬の半額にも満たないような価格提示をウェブ上でおこなっている司法書士事務所をよく見かける。

今もちょっと検索してみたら、相続登記が定額4万円なんてのもある。他の業務で儲かっているので相続登記は採算度外視などというのでなければ、このような価格設定では経営が立ちゆかないと思うのだが。

仮にその司法書士事務所は相続登記が定額4万円でも経営が成り立つのだとしても、そのような価格破壊をおこなって誰が得するというのだろうか。Google検索結果などに表示されるリスティング広告で、極端な低価格を表示することで集客を図ろうとしてるのを見ると呆れるしかない。

Webで思うように集客できないからとりあえず価格を安くしてみるなんて、商売として低レベルすぎであることが分からないのか。その辺の話はまたあらためて書きたいと思う。