記事タイトルとは関係ないが、今日は自己破産申立てのご依頼があった。当初は任意整理をご希望だったのが、収支の状況などを確認すると分割弁済は困難であるため自己破産申立てを前提に受任。

持ち家やその他のさしたる財産が無い場合、債務整理の手段として自己破産は有力な選択肢となるが、免責不許可事由に当たる行為が無かったかについては注意が必要。

免責不許可事由については、破産法252条の規定がある。同条第1項で「裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする」とあり、第4号に「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと」と規定されている。

浪費又は賭博その他の射幸行為とは、買い物や飲食などでの無駄遣いやギャンブルなどが典型的な例だが、投資(投機)などもこれに含まれる。株、FX、そして、最近では仮想通貨ビットコインなどで損失を出す人もいるだろう。

インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」は、各国で規制が強化されることへの懸念から価格が急落し、国内の大手取引所では17日、一時、1ビットコイン当たりおよそ100万円と、この1か月で一気に半分程度にまで値下がりしました。

ビットコインなど仮想通貨の場合は、これからどうなっていくのかは分からないが、仮想通貨の取引で利益を得ようとするのは投資では無く、明らかに投機であるといえよう。

正直なところ、仮想通貨には詳しくないのだが、仮想通貨取引はゼロサムゲームといって差し支えないはずだ。ゼロサムゲームとは、コトバンクのデジタル大辞泉では次のように解説されている。

参加者全員の得点の合計が常にゼロである得点方式のゲーム。一方が得点すると他方が失点するため、全部の持ち点の和が必ずゼロになるというゲーム理論。

つまり、仮想通貨ビットコインは価格が上がるか下がるかのどちらかを予想して掛ける、丁か半かの博打と同じであるわけだ。

これが株式投資であれば、資本主義経済は発展し続けていくものだという前提に立てば、参加者全員の持ち点が増えていくという可能性もあるという点で投機とは区別できる(デイトレードなどの短期保有に関しては、上がるか下がるかに掛ける投機であるが)。

今のところ、ビットコインなど仮想通貨で損失を出した方からの相談は無いが、FX取引で損失を出している方の相談は何度か受けたことがある。レバレッジを効かせてのFXなど明らかに投機であるし、更にはギャンブルといった方が正確であるように思う。

たしかに、FXでも利益を挙げている人がいるのは事実だが、素人が軽い気持ちではじめても儲けられる可能性はほとんど無いはず。そんなに簡単に儲かるなら自分がやりたいくらいだが、上手くいくとは思えない。

そんなわけで、仮想通貨やFXで多額の借金を抱えてしまった方が自己破産をするとなると、免責不許可事由に該当してしまう可能性が高いわけだが、実際に免責不許可になるかはあくまでも程度問題である。

たとえば、パチンコやパチスロをすこしやったり、ちょっと買い物をしすぎた人が全て免責不許可になるかといえばそんなことはない。借金を抱えてしまったおもな原因が免責不許可事由に該当する行為だとすれば、免責を得るのは困難だということだ。

ただし、仮想通貨ビットコインやFX取引をしていたとなれば、裁判所の目が厳しくなるのは間違いないはず。最終的には免責されるとしても、調査のために破産管財人が選任されることもあるだろう。

そこで、自己破産では無く、個人民事再生の手続きを利用するのも1つの方法である。民事再生法には、破産法の免責不許可事由に当たるような規定が無いので、借金の主な原因が仮想通貨ビットコインやFX取引であったとしても問題無く利用できる。

気になるのは、小規模個人再生の場合に再生計画案が不認可にならないかどうか。仮想通貨取引所が債権者であるときに、再生計画案に不同意の回答をしてくるかもしれないという不安がある。この辺のところは良く分からないので、実際に民事再生の利用を考えるときは要検討であろう。