兄弟姉妹6人での共有名義になっている不動産を、相談者単独の所有名義に変更したいとのご相談。

不動産を親から相続する際に、兄弟姉妹全員での共有名義に登記してしまったとのこと。その後、住んでいるのは相談者1人であり、今後のことも考えて単独の名義にしたいとのお考え。

たしかにもう高齢であり、このまま1人で一軒家に住み続けるのは難しくなるかもしれない。自宅を売却して施設に入ろうとしても、兄弟姉妹6人での共有名義では売却するのは困難だと予想される。

しかし、ご相談者の単独名義にするには、共有者全員の1人1人から名義変更することについての同意を得て、所有権移転登記の手続きに協力して貰う必要がある。

相談者が高齢ということは兄弟姉妹も同様に高齢であるわけなので、今から手続きをおこなうのはかなり大変そう。現実問題として、単独所有になるところまで持っていくのは困難なようにも思える。そうであれば、ご相談者の生前に不動産を売却するのは諦めるしか無いか。

そうであれば、このまま共有だったとしても、ご相談者が亡くなった際に相続人となるのは兄弟姉妹(または、その子ども)なのであるから、いっそのこと何もする必要も無いようにも思われる。

ところが問題なのは、兄弟姉妹のうちの1人が海外在住であるということ。その子どもも海外在住であり帰国の予定は無いので、先々は連絡を取ることすら困難になることも予想される。

相談者よりもその兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、相談者の相続手続きを進めるのが非常に難しくなってしまうかもしれない。そこで、次のようにすべきだと提案した。

  • 海外在住の兄弟姉妹の分だけで構わないので、早急に相談者への名義変更(所有権移転登記)おこなう。
  • 公正証書遺言を作成し、海外在住の兄弟姉妹以外の人へ財産を相続させる旨の遺言をする。

遺言については、日本にいる兄弟姉妹4名に4分の1ずつ相続させるとしても良いし、または、一部の相続人のみに相続させるとしても良い。もしくは、甥や姪に遺贈するというのも考えられる。いずれにせよ、遺産分割協議をしなくても相続手続きができるようにしておくべき。

問題なのはそのような作業を迅速におこなうには、すでに相談者が高齢になり過ぎているということ。相談者の判断能力は概ね問題無いように感じられるが、更に高齢の兄弟姉妹(海外在住)の協力を得て、贈与による所有権移転登記をするのは難しそうに思える。

すぐやるべきだとは伝えたものの今いち反応が薄く、兄弟姉妹とも相談してみるというようなお話し。更に1年、2年と経ってしまえば、もう手続きは不可能になるとも思われるのだが、スピーディーにことが進むとも思えない。

結局は何もせぬままになってしまい、相談者ご自身に相続が開始した後には、売却等の処分はほとんど不可能な状況になってしまうことが予想される。

今回のご相談のケースでは、兄弟姉妹6人での共有名義にしてしまったのがそもそもの誤り。そして、共有解消に向けて動き出そうと思い立ったのが遅すぎるというのも問題。何とかして差し上げたいと思う気持ちはやまやまなのだが。

そして、次に相談にお越しになるのはいつになることだろうか・・・。