取締役の重任の登記をして欲しいとのご依頼。それなら簡単だと気軽な気持ちでご相談者をお迎えすると、会社設立後に最初に訪れる任期で重任の登記をしたのみで、後は長年に渡り役員についての登記がおこなわれていないことが判明。

設立当初は取締役の任期が2年だったが、会社法の施行により選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長できることはご存じのようなので、そのような定款変更決議がなされているのか・・・?

しかし、取締役の任期が10年に伸張されているとしても、その任期も満了しており。さらに、取締役のうちの1名がだいぶ前に亡くなられていることも分かり。

取締役会設置会社なので取締役は最低3名だから、後任の取締役1名が必要となる。亡くなってから後任が選任されていないとすれば、長きに渡って選任懈怠の状態であったというわけか。

株式会社を設立した際、役員の任期が満了した際には改選の登記が必要だし、他にも登記されている事項に変更があった際にはその登記をしなければならないことは理解しているはずだと思うのだが。

名ばかりの取締役であって役員報酬等の支給もしていないような場合、その方が亡くなったとして何らの手続きも発生しないから、後任者を選任しその登記が必要だというようなことには頭が回らないのかもしれない。

しかし、そもそもが選任懈怠の状況であるのか、または選任はしているが登記をしていない、つまり、登記懈怠の状態であっても、いずれの場合だとしても気付いた段階ですみやかに登記をおこなうしかない。

もちろん、司法書士としては事実に基づいて登記をすべきであるのは当然だが、小さな株式会社だと株主総会など一切開催していないなんてのもよくある話で、そもそもの事実がどうなっているのかよく分からなかったりして。

さらに、このような場合の登記手続きについては、もちろん書式集などには載っていない。今回のように、長年に渡って登記懈怠(選任懈怠?)であった場合でなくとも、任期の途中で取締役が死亡したが後任者を選任しないうちに定時株主総会の時期になってしまったなんてケースについても同様だ。

余談だが、長年に渡って登記を放置していたのに、今になって早急に登記をしてくれと急かされることがある。何年も登記すべき時期を過ぎているのだから、今さら数日早く登記をしたからといって何も変わらないのだが。焦る気持ちは分からないでも無いけれど、そのようなご依頼を優先的に進めようという気にもあまりならず。

そして、当事務所のような零細司法書士事務所では、会社設立登記を除く商業登記は定型的な処理が出来るほどの件数が無いし、細かな点がちょこちょこと変わっていくので非常に気を使う。正直なところあまりやりたくないと思ってしまうこともあるのだが、ご依頼があればもちろん受任するしか無い。

内容によってはもう少し報酬設定を高くしてもよいかと思うこともある。以前より判断すべき事項も増えているし、必要書類も増えているのだし。なんて思いながら、件数が少ないこともあって先延ばしにしているうち、忘れた頃になってまたご依頼があるというような状況だったりして。