民事再生(小規模個人再生)の再生計画認可決定が確定し、現在は再生計画に基づく返済をおこなっている最中のご依頼者から、再生計画にしたがった返済が困難になったとのご連絡があった。

再生計画の遂行ができないのであれば、あらためて自己破産申立をすることも考えられるが、ローン支払い中の自宅を維持したいとのことなので、再生計画の変更が可能であるかについて検討してみることに。

民事再生法第234条に「再生計画の変更」についての規定がある。

(再生計画の変更)
第234条 小規模個人再生においては、再生計画認可の決定があった後やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときは、再生債務者の申立てにより、再生計画で定められた債務の期限を延長することができる。この場合においては、変更後の債務の最終の期限は、再生計画で定められた債務の最終の期限から2年を超えない範囲で定めなければならない。
2 前項の規定により再生計画の変更の申立てがあった場合には、再生計画案の提出があった場合の手続に関する規定を準用する。

3 第175条(第2項を除く。)及び第176条の規定は、再生計画の変更の決定があった場合について準用する。

再生計画の変更が認められるのは、やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難となったときに限られるわけだ。

このやむを得ない事由というのは、どんな事由を指すのだろうか。とりあえずネットで検索してみると、次のように解するのが妥当なようだ(なお、ネットによる調査の方法については、この記事の最後に書いているので興味があればお読みいただきたい)。

やむを得ない事由」とは、勤務先の倒産など、再生債務者の意思では制御できない事由である。また、やむを得ない事由があることに加えて、再生計画を遂行することが「著しく」困難な場合に限られる。

よって、病気で長期間入院することになったり、会社をリストラされたりという正当な理由が必要で、単に残業が少なくなった、ボーナスがなくなった、定年が来たという理由では認められない。

定年が来るのは再生計画を作っているときに分かるはずだから認められないのは当然であろう。しかし、残業が少なくなったり、ボーナスがなくなるのは、再生債務者の意思では制御できない事由であるような気もする。これが基準だとすると、やむを得ない事由だと認められるのはかなりハードルが高そうだ。

なお、私は個人民事再生の申立を50件ほどしているが、再生計画の変更の申立はしたことがない。というより、再生計画が遂行できなかったこと自体が今までない。返済が相当に苦しくなってしまったケースもあるのだろうが、債務が大幅にカットされるとの恩恵を受けるために何とか返済を継続したのだろう。

上記を基準にするとなれば、子供が私立高校に進学したことで支出が増えたというような事由はどうだろうか。

子供が私立高校にしか受からなかったとすれば、中卒で働かせるわけにもいかないし、高校浪人させるわけにもいかないからやむを得ない事由であるようにも思える。

しかし、私立高校の学費を支払うのが困難であることは初めから分かっていたとすれば、何としてでも公立高校に進学できるようにすべきであったともいえるから、再生債務者の意思では制御できない事由とまでは言えないかも。

それよりは、勤務先の業績悪化によりボーナスが無くなることの方が、再生債務者の意思では制御できない事由のような気がする。一社員の努力で会社全体の業績を良くするなんて普通は困難なのだし。

まあ、それでも駄目もとで申立をしてみるということも考えられるのだが、裁判所への再度の申立となるのであらためて報酬が発生するとしているのが通常であるはず。認められるかも分からないのに報酬をいただくのも心苦しいところではあるが、無償で請け負うわけにもいかない。

再生計画にしたがってある程度の返済をしてきたならば、支払うべき残額はだいぶ減っているのが通常だろう。たとえば、再生計画による返済総額が100万円で半分を支払っているならば残りは50万円。

家族や親類に頼んででも何とか支払ってしまうのがベストであるようにも思える。なんとか50万円を調達し残りを支払ってしまえば、債務の最大8割カットとの恩恵を受けることができるのだから。

誰に頭を下げても無理なのであれば仕方ないが、そうであれば自己破産するしかないようにも思える。そもそもの話として、再生計画の認可決定が出たことで与えられたチャンスをものにできなかったのだ。そうであれば、住宅を手放して一からやり直すのも仕方ないだろう。

債務整理の仕事をしていると、家を維持することだけが人生の目標になってしまっているような人を良く見るが、大幅にオーバーローンになっている家を守り続けるのがそんなに大事なことなのかと考えてしまうこともしばしば。家族のことなどもあるし、家を手放すとの決断が難しいというのもわかるが。

果たしてどうするべきか。

ネットによる調査について

最近では業務に関する調査をする際もネットを利用することが多くなっているが、その情報の信頼性には当然ながら注意が必要である。

弁護士や司法書士事務所のサイトであっても、それだけで信頼するわけにはいかない。最近では、専門家ではないライターなどが書いているであろう文章を見かけることも多いからだ。私の場合、弁護士、司法書士が自分の名前を出して書いている文章であることを、信頼するに値する情報であると判断するための一応の基準にしている。

それでも間違っているものも存在するが、弁護士や司法書士の本人が書いているのをいくつか見れば、どれが正しいかは簡単に分かるはず。それでも分からないとすれば、それは自分の能力や経験の問題。

また、そもそもの情報を得るためにはGoogle検索のスキルを磨くのが一番の早道だと考える。具体的には、その文章のタイトルや本文に使われていそうな言葉を想像し、さらに複数のキーワードによる検索を行うのだ。

今回のケースでいえば「再生計画の変更 やむを得ない事由」のような感じ。実際には、もっと複数のキーワードを入れることにより求める情報が得られることもある。

実務でぶち当たる疑問点の答えはだいたいGoogle検索で手に入る。便利な時代になったものだ。