海外に住んでいるが今は一時帰国中という方からの、相続手続きのご相談を立て続けに2件いただいた。

日本にいるのは1ヶ月ほどだが、一時的に日本に住所を移しているとのこと。そうであれば、今のうちに印鑑証明書を取っておいていただけば、その後に海外のお住まいへ戻られたとしても、日本の住所のままで相続登記等の手続きが可能。銀行口座の相続手続きもいくつかあるが、銀行では6ヶ月以内の印鑑証明書を要求している場合が多いので、印鑑証明書の期限も問題ないと思われるし。

現時点では日本に戻られる予定は無いとのことなので、海外にある現住所で登記する方が良いような気もする。しかし、相続した不動産は売却したいとの意向なので、日本の住所で登記しておいた方が無難か。当面は再び日本に来る予定も無いとのことなので、どうやって売却するのか私にはよく分からないが、まあ何にせよ相続登記を済ませておくことは必要なわけだ。

なお、今回はご相談へお越しいただく前から既に日本に住所を移されていたので、日本の住所で登記してしまおうかとの話になった。日本へ一時帰国中ではあるが、住所は海外にあるままという場合には、そちらの住所で登記するのが通常だろう。今回は、日本に住所があるというのであくまでも特例であるはず。

相続手続きのために数ヶ月間だけ日本に住所を置いたとして、何か不都合などが生じることはあるのだろうか。しばらくは日本に滞在できるというのであれば、日本に住所を置いて手続きを進めた方がスムーズに事が進むようにも思うし。今後もこういう話は出てくるだろうから、1度じっくりと調べてみる必要があるかもしれない。

海外の住所での相続登記

もう1件のご相談では、日本への帰国はあくまでも一時的なものであり、数日後には海外の住まいへ戻るとのこと。もちろん、住所も海外にある。

こちらのケースでは、当然に現住所での相続登記をすることに。住所を証する書面としては在留証明を用意してくださるとのことなのでそれで問題ないか。本件では他に相続人はいないので遺産分割協議書は不要。したがって、在留証明だけを取っていただけば、その他のものは日本国内で全部揃うことになる。

そこで、戸籍等の必要書類はすべてこちらで代わりにお取りし、必要なものが揃ったら委任状等をメールで送信することになった。先方でプリントアウトして署名押印した後に、在留証明とあわせて当事務所へお送りいただくと。これならば、EMS(国際スピード郵便)を使うなどして何度もやり取りする必要が無い。

当事務所では、相続人中の1人が海外に住まわれている方からのご依頼は頻繁にいただいている。近年とくに多いのは、海外に住んでいる日本人が増えているせいなのか、ただ単に当事務所Webサイトが「海外在住相続人がいる場合の相続登記」のような検索ワードで上位表示されるからなのかは分からない。

ただ、相続人中の1人が海外に住んでいるという場合、ご依頼者は日本に住んでおり、相続により不動産を取得するのも日本在住の方であるのがほとんどである。今回のように、ご自身が海外在住である方からのごご相談を立て続けに受けた記憶は無い。

10数年も司法書士事務所をやってきても、初めてやるような手続きのご相談は絶えずあるもの。40代半ばの今ならば新しいことに自分で対応していけるが、あと10年もしたら能力的に付いていけなくなるかもしれない。

今も頑張らなければならないし、同時に老い先のことも考えねばならない歳になってきた。開業から10数年経っても自分自身でバタバタと動き回っているとは思っていなかったが、まあそれは仕方ない。弁護士でも食えない人が多いなんていわれている今、確実に生き残って行けたとすればそれで上出来とも言えるだろうし。