ダイヤモンドオンラインに、住宅ローンは30歳までに組まないと身を滅ぼす理由とのタイトルの記事があった。執筆者である沖有人氏の著書をかつて読み、独自の視点がためになることもあったのだが、今回の記事にはかなり極端なことが書かれているように感じる。

『「人生100年」と考えるなら賃貸に住み続けるのはあり得ない』として次のように書いている。

そんな中で、自宅は賃貸でいいという選択肢はない。住宅ローンの場合は30歳で借りれば、再雇用定年となる65歳までの35年で完済できるのに対し、賃貸の場合は同じ年齢から借りても90歳まで生きるとすれば60年間賃料を払い続けなければいけないのだから、言うまでもない。マンションを購入すれば、ローン完済後の費用は管理費と修繕積立金だけになり、70平方メートルなら月約3万円、年36万円を見積もっておけばいい。

この記事の設定では、30歳で住宅ローンを借りて新築マンションを購入し、90歳になるまでそのマンションに住み続けることになる。管理が行き届いているとすれば築60年のマンションでも大丈夫なのかもしれないが、30歳の時点で60年先のことなど予測できるはずが無い。

それなのに、この記事では60年間も同じマンションに住み続けることを前提に人生設計することを推奨しているわけだ。100歳まで生きるなら70年だしとにかくずっと同じマンションに住むということだ。

それでも、自分は一生このマンションに住もうと決意し、30歳のときに住宅ローンを組みたいという人もいるかも知れない。しかし、30歳のときに35年の住宅ローンを組み、65歳のときに完済するなんていう人生設計が果たして正しいのだろうかという疑問もある。

収入が増えれば繰り上げ返済して早期完済することもあるだろう。または、購入したマンションの価値が下がらなかったならば、別のマンションに買い換えるということも考えられる。そういった選択肢を考慮せず、35年で完済するのを前提に考えるのが現実離れしているように思えてしまう。

無事に35年で完済できたならまだしも、30歳のときに勤めている会社に再雇用定年の65歳まで勤められるのかも分からない。失業や転職などにより、途中で住宅ローンの支払いが困難になる恐れもあるわけだ。

35年後の日本がどうなっているかなんて誰にも分からないが、移民の大規模な受け入れでもしない限り、日本の人口が大幅に減るのは間違いない。そんなときに、築35年の古びたマンションを所有していることがどれだけ役立つのかも分からない。そんな古びたマンションなど、そのときになってタダみたいな価格で手に入るかもしれないし。

そもそもの話に戻ると、30歳のときに住宅ローンを組むとして、その人はすでに結婚しているのだろうか。そして、結婚しているとして子どもは何人なのだろうか。この記事にある人生設計をするならば、30歳の時点で結婚するかどうかや、子どもの数も決まっていないといけないことになるだろう。

もしくは、30歳の時点で独身の人ならば、そのまま生涯独身で過ごすことになろうと、結婚して子どもが3人出来ようと、同じマンションに住み続けることを覚悟するしかない。

いずれにせよ、この記事は「何歳のときに何をする」という人生年表(?)に拘りすぎて、あまりにも現実離れしているように思える。いろいろ考える材料を与えてくれるという意味では有用な記事だともいえるだろうが。