結婚していない男女の間に生まれた子は、出生届を出すことにより母の戸籍に入る。そして、その子を父親が認知した場合には、父親との間に法律上の親子関係が生じることになる。

しかし、父から認知されただけでは、父の姓を名乗ったり、父の戸籍に入れるようになるわけではない。認知された子が、父の姓を名乗り、父の戸籍に入るためには、家庭裁判所による子の氏の変更許可を得なければならない。

上記のような知識はあっても、現実にこのようなケースで家庭裁判所へ子の氏の変更許可申立てをしたことは無いし、どのような場合に許可が得られるのか検討がつかない。

以下は、想像により書いているのであり、正しいかどうかは全くわからないので、もしお読みいただく場合はそのつもりでお願いします。

まず、父が独身なのであれば、子の氏の変更許可を得て、子が父の戸籍に入るのは難しくないように思える。この場合、父が親の戸籍に入っている場合には、事前に分籍して単独の戸籍にしておけばよいだろう。

非嫡出子を認知し、その後に親権者となった父が、その非嫡出子が小学校に入学する歳になったことから、その子の将来の生活に対する影響等を考慮し、子の氏変更許可の申立てをしたという事例についての裁判例がある(札幌高決平成23年1月28日)。

この裁判の事例では、父は嫡出子と同居生活をしているが、離婚しているため現在、妻はいない。そして、その非嫡出子は母と暮らしており、父とは同居生活をしていないが、それでも、母の氏から父の氏に変更することを許可するのが相当であるとの決定をしている。

けれども、父が婚姻中である場合に、子の氏の変更許可申立てをして、夫婦の戸籍へ非嫡出子を入れるなどということが現実にあるのかは疑問。

妻が同意しているならば、裁判所の許可も得られるとも考えられる。しかし、その妻との婚姻中に出来た非嫡出子だとすると、それは不倫相手との子であるわけだから、その子を自分の戸籍に入れることに同意する妻などいるのだろうか。

そして、仮に妻が同意したとしても、裁判所が許可しないようにも思える。そう考えてみると、現在の妻と婚姻する以前に生まれている非嫡出子、たとえば、事実婚である妻との間にできた子だったとすれば、許可が得られても良いようにも思う。

事実婚である妻との間に子ができたが、その後に別れてしまい、子は認知していなかった。そして、現在の妻とは法律婚であるというような場合だ。極めて稀なケースだろうが、このような事例であれば倫理的な問題も無いように感じる。

そうでないとすれば、父が子を認知した後に子の氏の変更許可を得るとすれば、父が婚姻中で無いことが前提となるように思うのだがどうなのだろう。