先日あった、祖父名義の不動産の相続についてのご相談。数次相続が開始しているため、亡父の相続人として遺産分割協議の当事者になっているとのこと。そして、他の相続人から遺産分割協議書が送られてきたのだが、果たして署名押印してしまって良いものかとのご相談。

実際の事例とはだいぶ変えているが相談は次のような感じ。結論としては、納得出来る案が出てくるまでは放っておいて差し支えないと思われるが、相続に関する争いは本当に多いと実感する日々。

主な財産は土地家屋のみなので換価分割を予定している。まずは、相続人中の1人の名義にしすみやかに売却した後に、諸経費等を差し引いた残額を法定相続分どおりに分配するとの内容。署名押印を求められているという遺産分割協議書を見せてもらうと、上記のような内容が書かれており特段問題は無さそう。

しかし、諸経費等の見積もりに大きな問題が。確実にかかる費用については大まかに見積もられており、まあそれは問題無さそうな感じ。ところが、不動産の売却等にかかる費用以外に、今後もお墓を守っていくためにお金がかかるからその費用も入れたいというような話があるそうで。

そして、その費用については金額が全く見積もられていないのだ。そんな状態で遺産分割協議書に署名押印をしてしまったとすれば、売却代金から差し引く金額を自由に決められることになってしまい、残った金額を法定相続分どおりに分配するといっても、ほとんどお金を受け取れない可能性が高いのでは無いか。

不動産を取得するのが信頼出来る人であり、分配金をちゃんと受け取れるとの確信があるので無ければ、上記のような遺産分割協議書に署名押印すべきでは無いと指摘。不動産を換価し残金を分配するまでの一連の手続きを弁護士などの代理人にまかせるのが良さそうにも思うが、他の相続人が合意するはずも無いのでそれは無理。

そうであるなら、残ったら分けるというような取り決めをするのでは無く、諸経費等の見積もりを再度行った上で確定した受取額を遺産分割協議書に入れるべきである。もしくは、分割金として受け取る金額の最低額を定めた上で合意する必要があるだろう。

ただ、どのように定めるにせよ、相続人中の1人に不動産を取得させてしまうと、処理が済んだ後にちゃんとお金の引き渡しを受けられるのかという心配がある。任意の引き渡しを受けられなければ、結局その時点になって裁判手続きによるしかないなんて可能性も考えておくべきだろう。

面倒なことに巻き込まれたくないし早く終わりにしたいとの気持ちは分かる。しかし、そうであるならば自分は財産を受け取らなくて良いと思うしか無いだろう。揉めたくないがお金はちゃんと受け取りたいというのは無理な話。

全員が法定相続分どおりの分割に納得するならば何も問題無いのだが、誰かが相続分以上に受け取りたいと考えるとまとまる話もまとまらない。自分としては法定相続分どおりで良いと考えるならば、そういう内容の協議案が出てくるのを待てば良いというのが一応の結論。

もしくは、費用をかけてでも前に進めたいと思うならば弁護士に頼むしか無いだろうと。他人ごとながら大変そうだし気の毒だとは思うがそれ以上は何ともし難い。何の解決にも至らない話になってしまったが、今日はこの辺で終わりにしたい。