最近は、銀行預金(貯金)の相続手続きのご依頼をいただくことがが多くなっている。不動産の相続登記手続とあわせてご依頼いただくことも多いが、預貯金の相続手続きのみをご依頼いただくケースもかなり増えている。

「預貯金の相続手続きも司法書士に依頼できる」というのが一般に認知されるようになったのか、または、当事務所ウェブサイトによる広告宣伝がうまくいっているからなのかは不明だが、それなりに大きな収益源の1つになりそうだとの期待を持っている。

当事務所の場合、相続登記のみのご依頼と比較すると、預貯金の相続手続き2件をあわせてご依頼いただければ、司法書士報酬の額が2倍程度になるといったイメージ。また、預貯金の相続手続きのみを遺産承継業務として受任する場合であっても、遺産分割協議書の作成、必要な戸籍等の収集などもあわせてご依頼いただけば充分に採算が合うだろう。

ただ、銀行等における預貯金の相続手続きを数多くご依頼いただくようになると、銀行窓口へ出向いて手続きをおこなう手間が結構な負担となる。最近は事前予約してから手続きに行くことも多くなっているが、それでも戸籍のコピーを取るときなど非常に長時間待たされることも多い。

たとえば、配偶者と子のみが相続人である、とくに難しい点のない遺産相続手続きについて考えてみるとする。この場合、戸籍等の必要書類が揃っているかを確認して、全てのコピーを取るのにかかる時間は、司法書士が作業をおこなったとすれば10分もかからないだろう。遺産分割協議書のチェックもするならばもう少し時間がかかるかもしれないが、たいした違いは無いはず。

それなのに、同じ通数の戸籍等のコピーを取るのに、銀行窓口における相続手続きでは30分以上も当たり前のように待たされるのが普通。そして、そんな時間をかけたのに、戸籍等の必要書類が揃っているかの確認については、専門の相続センターがおこなうのだそうな。それでは、「30分以上もかけて何をしていたの?」と聞きたくなることもしばしば。

戸籍等の束ではなく法定相続情報一覧図を持参すれば少しは時間が短縮されるかもしれないが、相続登記と銀行預金1口座のご依頼であったとして、わざわざ手間をかけて法定相続情報一覧図を作成するのもどうかと思うし、その場合に費用を請求できるのかという問題もある。

とにかく時間がかかりがちなのが難点ではあるが、銀行窓口へ出向いて手続きをする場合、司法書士が代理人として手続きをおこなうことについては、全く問題なく受け入れられるのが通常になっている。地銀含めて銀行は大丈夫だろうし、信用金庫も問題ないところが多いか。もっと地域密着な感じの小さなところは微妙だとしても、当事務所で依頼を受けるものについては、ほとんどが問題なく手続きをおこなえている。

また、時間がかかるといっても窓口での手続きは1時間もあれば済むのだから、銀行の営業時間内にせっせと窓口へ行く時間を何とか捻出していくことが出来れば、うちのような零細司法書士事務所にとっては充分な収益源となるはず。

預貯金の相続手続きは、必要書類を適切に揃えて銀行へ持参すればなにも難しいものではなく、司法書士が代理人として手続きをおこなうといっても単なる手間賃のようなものである。それでも、自分で手続きをするのが難しい人も多いだろうし、まだしばらくの間は需要の多い状況が続くことだろう。

まあ、遺産総額の○%みたいな報酬設定でなく、銀行預金1件あたりの報酬で請け負っている限り、どこかでセミナーを開いているような司法書士事務所のように高額の報酬を得ることはできないのだけれども、大もうけを考えるよりも身の丈に合ったやり方のほうが心穏やかでいられるかとも思うわけで。