相続登記が義務化されるまで残り約1年となり、Google検索でも相続登記の広告が目立つようになっている。
当事務所でも僅かな予算設定ではあるもののGoogle広告を利用しているし、ウェブサイトのSEOのみによって十分な集客をするのが難しい場合、Google広告などのリスティング広告を併用するのもやむを得ないところか。
ただ、Google広告(検索結果に「スポンサー」と表示されているページ)で出てくるサイトを見ると、費用の安さを売りにして相続登記の集客をしようとしている司法書士事務所(司法書士法人)も存在するようだ。
ちなみに、Google広告で表示されるページを見るときには、広告をそのままクリックするのではなく、そのサイトをあらためて検索して訪問するよう心がけているので念のため。
いくつか見たところでは、相続登記の報酬は66,000円(消費税込み)の定額というのがあった。戸籍など収集の実費、登録免許税などは別途かかるものの報酬は定額の66,000円のみ。
戸籍などを何通取っても別に手数料はかからず、遺産分割協議書の作成費用も含まれているし、数次相続や代襲相続がある場合でも費用は定額(低額)のままであると。複数の法務局の管轄に不動産がある場合はさすがに定額ではないのだろうが、何にせよ相場よりかなり安い価格設定であるはず。
別のサイトでは55,000円定額なんてところもあった。こちらは郵便やメールのみによって手続きができるので司法書士事務所に行かずに手続きができるとのこと。
依頼者と全く面談しなくて大丈夫なのかという点はさておき、最初の相談も対面によらず、その後のやりとりも全て郵便やメールによるとなると非常に手間がかかるはず。
それを55,000円などという定額(低額)で請け負っていたらとてもじゃないが商売にならないと思うのだが。
当事務所でも相続人が1人のみの相続登記であって、戸籍等もすべて依頼者が揃えてきた場合には、上記とあまり変わらないような安い(?)価格設定となっている。
しかし、様々な条件によって費用加算があるから、個々のケースによってはこれよりも大幅に高額な司法書士費用となるのは当然のこと。
ネットで全国から相続登記の依頼を集めたとしても、そのほとんど全てが単発の依頼になるはずなのだから、格安の費用を売りにして集客するなんて愚の骨頂。
極論を言ってしまえば、この仕事をそれほど長く続けるつもりはない(早く引退したい)当事務所のような状況にいるならば、思い切り価格競争に持ち込むのも1つの方法かもしれない(そんなことしたら、相続登記の依頼がいくらあっても採算割れなんてことにもなりかねないが)。
ただ、これから10年、20年、さらにはもっと長く司法書士を続けていくつもりの人は、安い定額の費用を売りに集客するなんてのは止めた方がいい。
相続登記だけでなく他の司法書士業務についても、価格破壊的な低価格で集客しようとする広告は以前から存在していた。ただ、そういうホームページは見た目も今いちなのが多かったし、実際に集客できていると思えるのはあまりなかったように感じる。
それが、このところ見かけるサイトは見栄えも立派だし、Google広告などを利用すれば実際に集客できるのかもしれない。そういうのが増えると、みんなで自分たちの首を絞めていくことになっちゃいますよ。
債務整理関連では大きな弁護士法人などが派手な広告で集客しているけど、あれは別に価格が安いから集客できているわけではなく(むしろ、相場より高かったり)。
債務整理と相続登記の依頼者とでは、費用に対する感覚も違うとは思うけど(債務整理の場合、そもそも費用などちゃんと確認せずに依頼する人が多い)。
今回の投稿も、思いつくままに適当に書いたので、少し大げさだったり事実と異なるところもあるかもしれないですが、ちょっと危険な状況であるのはたしかなはず。
なんにせよ、せっかく司法書士が独占状態の相続登記業務なのに、司法書士同士で仁義なき価格競争をして共倒れになるようなことは止めましょう。
お疲れ様です。昨年9月に投稿させて頂いた者です。仰る通りで安さをアピールする司法書士事務所の広告がかなり多いと私も感じておりました。相続登記義務化を控えて業界内の競争がかなり激しくなっている印象をもちます。以前、貴殿の貴重な御意見を参考にし、私は受験勉強開始を中止しました。現在の仕事をそのまま続けることにしました。ただ、WEBマーケティングの分野に前から興味がありまして、司法書士など士業の広告もたまに分析しております。今後とも御時間の余裕があるときにでもブログを更新して頂ければ幸いです。よろしく御願い申し上げます。
コメントありがとうございます。
相続登記など不動産登記では、どの司法書士に依頼しても結果は同じはずであり、付加価値を付けるのが難しいため、価格競争に走りがちなのだと思います。しかしながら、同業者の間で価格競争を繰り広げても、皆が消耗していくだけです。多くの業界においても同じような状況があるのでしょうけど。