抵当権抹消と条件付賃借権設定仮登記抹消の登記を連件で申請した。

抵当権抹消登記はよくご依頼いただく登記の1つだが、抵当権の後に「条件付賃借権設定仮登記」が付けられているのを見るのは久しぶり。というより、もしかしたら開業以来初めてかもしれない。

そして、この不動産は敷地権付きの区分建物だったため、賃借権の効力は敷地権には及んでおらず、従って、条件付賃借権設定仮登記の抹消にかかる登録免許税は建物部分についての1,000円のみになる。

不動産の一部について賃借権の設定登記を申請するには、その部分に関し分割または区分による登記をした後でなければ、することができない(昭和30年5月21日民事甲972)。

なんて当たり前のように書いているが、実はちょっと心配になって調べてみて分かったことなのだが。司法書士試験の勉強をしたのもずいぶん昔の話だし、普段やらない登記はやはりちゃんと事前に調べないと危険。

そうして、トラップに引っかかることもなく無事に申請したつもりが法務局からの電話。

登録免許税を1,000円で申請したことについては、「ちゃんと分かってるじゃん」というようなニュアンスが感じられたのだが、問い合わせの内容は不動産の表示について。

敷地権には条件付賃借権設定仮登記の効力が及んでいないのに、申請書には敷地権の表示が入っているがこれでいいのか?とのこと。

実は、この点については私も疑問だった。しかし、不動産登記申請システム(BBC 2in1)で敷地権の表示を削除しようかと思ったのだけれども、1度消したつもりがすぐに復活してしまった。

そこで思い直して、敷地権付き区分建物の「不動産の表示」には当然に「敷地権の表示」があるのだから、条件付賃借権設定仮登記の効力が及んでいないからといって、不動産の表示から削除するべきではないと思い、そのまま申請することにしたのだ。

まあ、削除するようにいわれたら補正すればいいだろう、という甘い考えがあったのも事実だが。

結果としては、システムで勝手に入ってしまうこと、そして、申請書に書いているのはあくまでも「不動産の表示」なのだから、賃借権の効力が及ばないからといって、敷地権の表示を削除するのはおかしいのではというような話をしたところ、じゃあこのまま進めますという話になった。

それが本当に正しいのかは分からないが、その後は何の連絡も無しに登記が完了したので、登記官の見解も同じだったということであろう。

条件付賃借権設定仮登記が付いているケースなんて、もうあんまり無いと思われるので、今から追求しても仕方ないという意識も双方にあったのかもしれないし、それより何より抹消ですから。

話は戻って、敷地権付き区分建物に「条件付賃借権設定の仮登記」をしても、その効力が敷地権に及んでいるか否かは登記事項証明書を見ても全く分からない。たとえば、「この条件付賃借権設定仮登記は建物部分のみにしか効力を有しない」というような記載がされるわけではない。

よって、不動産の一部に賃借権の設定登記を申請することが出来ないのを知識として知らなかったとすれば、条件付賃借権設定仮登記の抹消の際の登録免許税が1,000円(建物部分のみ)であることに気付くのは難しいだろう。

前にも書いたはずだが、今はネットで検索すれば業務に必要な情報の多くが得られる。ただし、一般の人が情報の真偽を見極めるのは困難なのであるから、ネットの情報を鵜呑みにしてはいけない。

専門家がその知識に基づいてネット検索をすることで、自分の思考が一気に拡大されるような効果を得ることが出来るわけだ。何でも気軽に聞けるような知り合いがいない私にとって、本当に素晴らしい時代になったものだ。

その分こちらからも情報提供は積極的に行いますが、情報の真偽はちゃんと見極めて、自己責任でお願いします。