株式会社の定款認証手数料が変更となったことにともない、株式会社設立の際に使用してる定款の規定について見直しをした。以下、備忘録的に記すものなので、参考にする場合には自己責任でお願いします。

令和4年4月1日から株式会社の定款認証手数料が次のとおりとなった。

1.資本金の額等が100万円未満である場合 3万円
2.資本金の額等が100万以上300万円未満である場合 4万円
3.上記1及び2以外の場合 5万円

注意すべきは、資本金の額が定款案に記載されていない場合などでは、実際の資本金の額にかかわらず手数料が5万円になってしまうことがあること。

日本公証人連合会ウェブサイトの「会社の定款認証手数料の改定」のページで次のように解説されている。

手数料は株式会社等の資本金の額等によって区分されています。この資本金の額等が定款案に記載されていない場合には、「設立に際して出資される財産の価額」が基準となります。定款の中には、「設立に際して出資される財産の最低額」を記載しているものがあります。この場合には、改正後の公証人手数料令第35条第1号及び第2号のいずれにも該当しないので、同条第3号の「前二号に掲げる場合以外の場合」に該当することとなり、「5万円」の手数料額となります。

定款案に「資本金の額」を記載せず、「設立に際して出資される財産の最低額」のみが記載されている場合には、手数料が5万円になってしまうと。

これまで当事務所では、定款には「設立に際して出資される財産の最低額」のみを記載し、資本金の額は「発起人決定書」で定めていたので、このやり方だと全て手数料が5万円になってしまう。

そこで、定款で「資本金の額」を定めるよう、定款の規定等の見直しをおこなうことにした。

なお、定款の記載を「設立に際して出資される財産の最低額」ではなく、「設立に際して出資される財産の価額」にすれば、資本金の額はこれまでどおり「発起人決定書」で定めるのでも良いことになる。

しかし、資本金の額をわざわざ別に定める意味も無いかと考え、定款で定めることとした次第である。

ちなみに、「発起人が割当てを受けるべき株式の数及び払い込むべき金額」については、今後も「発起人決定書」で定めるので、「資本金の額」については、定款、発起人決定書のどちらで定めても問題ないわけだ。

それでも、定款に「設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額」として定めるのが自然かと思っただけなので、後は好みに応じてどうぞ。

定款で資本金の額を定める場合の例として、日本公証人連合会による定款記載例が参考になる。このページの「小規模な会社」にある定款記載例は次のとおり。

(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)
第23条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金100万円とする。
2 当会社の成立後の資本金の額は、金100万円とする。

日本公証人連合会による定款記載例なのだから、このまま利用すれば問題ないのだろうが、会社法32条1項3号では、定款または発起人全員の同意により決定する、株式会社の設立に際して次に掲げる事項として、「成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項」と規定されている。

この規定にしたがうなら、「設立に際して出資される財産の全額を資本金とする」というような文言を入れたい。出資される財産の価額が100万円で、資本金額が100万円であるのならば、出資される財産の全額を資本金としているのは当たり前のことではあるが。

そこで、日本公証人連合会による定款記載例に「当会社の設立に際して出資される財産の全額を資本金とし、」を加えることとした。

(設立に際して出資される財産の価額及び成立後の資本金の額)

第○条 当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金100万円とする。

2 当会社の設立に際して出資される財産の全額を資本金とし、当会社の成立後の資本金の額は、金100万円とする。

これだと少しくどい気もする。今までは発起人決定書で「設立に際して出資される財産の全額を資本金とし、その額を金100万円とする。」というように定めていたので、これでも問題無いようにも思うが、会社法32条1項3号の規定からすると、やはり「成立後の株式会社の資本金」にあたるような文言も入れたいので上記のとおりとなる。

定款の規定は気にし出すときりがないし、これがベストかも分からない。繰り返しになりますが、参考にする場合には自己責任でお願いします。